新米研究者の日常ブログ

新米研究者の雑記ブログ。某メーカーで研究者として勤務して早3年。研究者として経験したことをベースに、仕事や生活に役立つ知識・グッズの紹介、科学の雑学、日々感じることをひたすらに発信します!

「左利き」になる原因は遺伝子にあった?

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こんばんは!

 

実は、私は左利きです。

ただし、「お箸」と「文字を書く」だけが左利きで、それ以外は全て右利きというエセ左利きです笑

左利きというと、天才っぽい!とか、賢そう!とか憧れみたいな印象をもたれることがあります。これは左利きのメリットでもあると思います(優越感)。

しかし、私は天才ではないですし、特段賢くもない。というかそもそもガチ左利きではないので、いやいやそんなことはないっす。。って感じです。

むしろ、食事のとき左隣の右利きの人と腕がぶつかりまくったり、Suicaのピッ!をわざわざ左手で右にある機械にやらなければいけないとか、デメリットの方が多いと感じます。

 

このように、左利きのメリット、デメリットはさまざまあるのですが、ふと1つの疑問が浮かびました。

 

「そもそもなぜ左利きになるのだろうか」

 

個人的なイメージでは、生まれた直後になにか動作を行う確率が多かった手が利き手になるんじゃないかと思っていました。つまり、生後の後天的要因によって利き手が決定されるのでは、となんとなく思っていました。

この疑問が気になり少し調べてみたところ、「左利きに関連する遺伝子領域が特定された」といった内容の科学論文が2019年に投稿されたようです。

これはつまり、私がイメージしていた後天的要因ではなく、先天的要因、つまり生まれた時点で利き手は決まっているということ!?

めちゃくちゃ気になります!

 

この論文を紹介した英文記事があったので、今回はこの内容を紹介したいと思います。

www.technologynetworks.com

利き手は、長年科学者を困惑させてきた概念だそうだ。人口の90%は右利き。

なぜ右利きが優勢なのだろうか?右利きか左利きかを決定する要因は何なのだろうか?

 

 

左利きの歴史

「左利き」が何百万年も前から人類に存在していた。その根拠は、考古学的、古生物学的な調査により、左利き用に設計された古代の武器や道具が発見されたからだそうだ。

旧石器時代の人たちは、洞窟壁を手書きの絵で飾っていた。その絵画を分析すると、作者は右利きと左利きの両方存在することが明らかになった。

一方で、左利きは社会的に非難される存在でもあった。

17世紀、聖職者たちは左利きは悪魔の洗礼を受けた結果だと信じていたため、左利きであることは「邪悪」な体質と見なされていた。

さらに19世紀、精神科医のチェザーレ・ロンブロソは、右脳を使う傾向にある人、つまり左利きの人間は犯罪者になりやすいと考えた。

このような背景がありながらも、現代では左利きに対して過去のような迫害的な見方はされていない。時間の経過とともに受け入れられてきたということであろう。それにもかかわらず、利き手を決定する生物学的メカニズムは議論され続けているのだ

 

少数派は異端者とみなされるものということでしょうか、左利きが社会的に迫害されていた時期もあったんですね。。

 

利き手の秘密は遺伝子にあった

オックスフォード大学により、左利きの原因となりうる遺伝子座を特定することに成功した。この成果は、2019年のBrain誌に投稿されている。

彼らは、UKバイオバンクから集められた、約40万人(そのうちの3万8332人が左利き)のゲノム配列を解析して、原因となる遺伝子領域を特定したそうだ。さらには、脳のスキャン画像も組み合わせて比較している。

その結果、左利きにもっとも関連する一塩基多型(SNP)※として、「rs199512」が見いだされた。このSNPは、脳発達と神経軸索誘導に関与するタンパク質(WNT3、MAPT、MAPT-AS1)を発現する遺伝子座に存在していたとのこと。

※一塩基多型とは(Wikipediaより)

ある生物種集団のゲノム塩基配列中に一塩基が変異した多様性が見られ、その変異が集団内で1%以上の頻度で見られる時、これを一塩基多型(いちえんき・たけい、SNP : Single Nucleotide Polymorphism)と呼ぶ。

 

左利きは言語能力が高いかもしれない

遺伝子解析の結果と脳画像データを組み合わせた結果、左利きに関連する一塩基多型(SNP)は脳の白質の構造的結合と非常に強く関連していることがわかった。

特に顕著な脳領域は、ブローカ野と側頭頭頂の接合部であり、言語に関連する領域だそうだ。左利きの人は、脳の左右の言語領域の連携がよりスムースであり、言語能力が高い可能性がありそうとのことだ。

このように、左利きに関連した脳の細胞骨格の違いを確認できたのは初めてらしい。

 

左利きと精神障害の関係性

左利きのデメリットを示唆するようなデータもあるようです。

左利きと統合失調症の間に統計学的に有意な正の相関関係があることを発見したそうだ。ただし、この相関は、わずかな違いにしか対応していないので、因果関係があることを証明したものではないとのこと。

 

ホントか?と思い、Pubmedという論文検索サイトで調べたところ、たしかに左利きと病気(脳に関連する疾患が多い?)に関する文献はいくつかヒットしました。

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左利きは発達生物学の結果である

オックスフォード大学のドミニク・ファーニス教授は、「歴史を通して、左利きは不運であり、邪悪なものとさえ考えられてきた」と述べている。

一方で、「左利きは脳の発達生物学の結果であり、一部は多くの遺伝子の複雑な相互作用によってなされるものである可能性を実証した。このような複雑なメカニズムが人間を人間たらしめている。」とも述べている。

 

以上、自分がまさに左利きであり、気になった英文記事を一部紹介してみました。

論文そのものを読んではおらず、データを読み取ったわけではないですが、左利きと特定の遺伝子座の変異に相関性がありそう、という個人的には驚きの内容でした。

左利きは少数なので、このような遺伝子変異は頻繁には起こらないもので、たまたま特定の遺伝子座に変異が入った人が、左利きになるということでしょうか。。

ふと感じた疑問であっても、このようにすでに研究対象とされているパターンはかなり多いので、科学ってやっぱりすごいなと思います。

今後も面白いネタがあったら同じように紹介できればと思います。

それでは!

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