新米研究者の日常ブログ

新米研究者の雑記ブログ。某メーカーで研究者として勤務して早3年。研究者として経験したことをベースに、仕事や生活に役立つ知識・グッズの紹介、科学の雑学、日々感じることをひたすらに発信します!

猫は自分の名前を聞き分けられる?

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こんばんは、モルモル(@morumorublog)です。

今回は、猫に関する面白そうな雑学の紹介です。

 

私は、猫が大好きです。

 

猫はとてもマイペースで、あまり人間にかまってくれないツンデレな印象があります。

 

それもそれでたまらないのですが、名前を読んでも全くの無反応だとさすがにちょっと寂しいです。

 

猫は人間が自分の名前を呼んでいるのをわかっていないのでしょうか。

 

あるいは、名前を呼ばれているのはわかっていても無視しているのでしょうか。

 

このような疑問を少し紐解くような知見が、最近の研究で得られたようです。

 

タイトルによると、「猫は自分の名前を他の言葉と区別することができる」とのこと。

日本人の著者ですね。上智大学の研究チームの成果のようです。

 

今回はこの論文を紹介したいと思います。

※2月22日のニャンニャンニャンの日に投稿すればよかったと記事を書きながら今更気づきました。。。

www.nature.com

 

 

人間と猫のコミュニケーションに関する研究は盛んに行われている

猫は大人気のペット動物の1種。

 

全世界の飼育個体数は、推定でも2億頭ともされているとのこと、本当に大人気。

 

このようにペットして完全に馴染んでいる猫について、人間をどのように見ているのか、猫自身の行動に人間は影響しているのかどうか、といった猫&人間のコミュニケーションに関する研究は多くなされ、知見も得られつつある。

 

・猫は隠れた食べ物を見つけるために、人間のポインティングジェスチャーを手がかりにする

・食べ物を見つけられないとき、犬は人間を凝視する一方で、猫は人間を凝視しない

・猫は恐ろしい場面に出くわすと、社会的参照行動(人間の顔を注視する)を示す。

*ポインティングジェスチャー:おそらく、「あっちだよ!」といった指差しのことです。

 

このように、猫は飼い主の表情にある程度反応していることが明らかになっている。

 

動物と人間のコミュニケーションに関する研究は、主には上記のような「視覚」に着目したものが多かった。

 

近年では、人間の発する言葉に対する反応能力、つまり「聴力」に着目した研究が、サル、オウム、イルカなど様々な動物種で盛んに行われている。

 

今回紹介する研究は、猫が人間の発する言葉を識別する能力があるのかどうかを調べた研究である。

 

 

猫は自分の名前を他の言葉から識別することができる

猫が人間の言葉(自分の名前)を識別できているのかどうか調べるために、馴化脱馴化法という評価系を用いた。

 

馴化脱馴化法とは

言葉を話せない乳児や動物が、異なる刺激を区別できるかどうかを調べる方法の一つ。対象となる個体に同一、あるいは同一カテゴリーの刺激を繰り返し提示すると、刺激に対する注視などの反応が次第に減少する(馴化)。次に新奇の刺激を提示すると反応が回復する(脱馴化)、もし刺激の区別ができなければ反応は回復しない

https://www.sophia.ac.jp/jpn/news/PR/press0405.htmlより引用・改変

 

まずは、猫に自分の名前と同じ長さ・アクセントの全く別のワードを4回聞かせる。

 

回数を重ねるごとに、耳や頭を動かすといった応答反応の強度が徐々に弱まる(馴化)

 

最後に、猫の名前を呼ぶ。そのとき応答反応が弱まったままだったら、自分の名前を他のワードと区別できていない。

 

一方で、応答反応が回復したら、他のワードと自分の名前を区別できているということになる(脱馴化)

 

検証の結果、関係のないワードを4回聞かされて馴化した状態から、猫の名前を呼びかけると明らかに反応性が回復した。

 

さらに、複数頭で飼育されている猫に対して、「他の同居猫の名前」と「自分の名前」という組み合わせてで全く同じ検証を行ったところ、同様の結果が得られたとのこと。

 

つまり、猫は自分の名前と似ている長さ・アクセントの別ワード、あるいは他の同居猫の名前の中からであっても、自分の名前を識別できていることが示唆された。

 

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https://www.nature.com/articles/s41598-019-40616-4より抜粋・改変

 

上記の検証では、猫の飼い主の音声を用いて実験が行われたが、驚くべきことに、全く猫と接点のない赤の他人の音声を用いた場合でも、ほぼ同様の結果が得られているということ。

 

つまり、飼い主特有のなんらかの要因に左右されているわけではなく、人間の言葉そのものを識別する能力を備えている可能性があるということだ。

 

猫と人のコミュニケーションの理解はますます深まる

今回の結果から、イヌ、チンパンジー、イルカなどで明らかになっていた、人の言語を区別し認識する能力が、猫にも備わっている可能性を見出すことができた。

 

猫は、いまや人間にとって重要なパートナーのひとりです。

 

猫とヒトのコミュニケーションの理解は、双方の福祉的な観点で重要であり、今回得られた知見はそこに貢献するものである。

 

 

 

以上、猫と人のコミュニケーションに関する論文の紹介でした。

注:一部データのみ抜粋したため、原著ではもう少しデータがあり考察も幅があります。興味がある方は読んでみてください。

 

この結果から、猫ちゃんは人の言語をある程度聞き分ける能力がありそう、ということが言えると思います。

 

他の動物種でも同様の傾向があるということは、種を超えて保存されている能力なのかもしれません。

 

とすると、次に気になるのは、どうやって識別しているのかという点と、識別しやすい音声(波長?)があるのかという点。

 

もしこれがわかれば、猫ちゃんに反応してもらいやすい名前を科学的に提案できるのかもしれませんね。

 

あと、冒頭で示した疑問については、猫ちゃんは飼い主に呼ばれているのはわかっていても、あえて無視しているという可能性が高いってことですかね。

 

憎たらしい、だがそれがまたかわいい!

 

皆さんは猫が好きですか?名前を呼んだらちゃんと反応してくれますか?

 

それでは!

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