こんばんは、モルモル(@morumorublog)です。
私は現在、メーカーの研究職として働いています。
研究職として働いている人は、ほぼ例外なく学生時代から研究に関わっています。
つまり、大学(アカデミア)と企業の両方の環境で研究に携わった経験があるということになります。
実際に両方を経験してみて、同じ研究でも両者でそれぞれ特色があると感じました。
研究職を軸に就職活動すると、面接でもたまに聞かれるポイントでもあると思うので、もし同じ境遇の方がいたら、少しでも参考になればと思い、記事にしました。
ということで今回は私が感じた、大学と企業の研究の違いについて紹介します。
※あくまで私の経験から感じたことで一例にすぎません。もし違った見解があったらぜひともシェアしていただきたいです。
大学と企業の研究の違い
私の思う、大学と企業の研究の違いを4つの観点から紹介します。
①成果・ゴール設定の有無
大学の研究は、学問を追求することを目的としている場合が多いです。
つまり、全く未知の領域に切り込んでいく研究が必要になります。
そのうえでは、「勝算があるかわからないけど、とにかくやってみよう」といったスタンスをとることが当たり前であり、そこで得られる結果に応じて次の検証に進みます。
一方で企業の場合、営利目的であるため、研究が利益につながらなければいけません。
そのうえでは、研究を始めるまえに、「いつまでに、どれだけの成果が得られ、会社にどのような利益をもたらすか」といった明確な成果・ゴール設定がなされます。
このゴール設定がないと、いざ研究を始めて結果が得られても、会社の利益につながられなければただの支出として終わってしまうからです。
このように、大学の場合は、学問が相手になるので、幅広く研究に取り組むことや、失敗に対する許容性が高い印象があります
一方で、企業の場合は、利益につながるかが重要視されるため、勝算・ゴールといった明確な目的設定と、それに応じた必要最低限の研究が求められる印象があります。
②研究の自由度
研究の面白さは「仮説⇒実験⇒考察」のサイクルをひたすらに繰り返し、1つの結論に結びつけていく過程だと私は思います。
このサイクルを実行するためには、まず仮説を自分で考え、周囲に提案して承認を得る必要があります。承認を得られて、研究を進めることができます。
このサイクル実行に関して、大学の方が圧倒的に自由度が高いと私は感じています。
私の大学では、自分が面白さを感じた観点や手法があった場合、提案すれば基本的になんでもやらせてくれる環境でした。
一方、企業では、自分がやりたいと思う研究を提案することまではできるのですが、承認される機会はなかなか少ないのです。
承認されない理由として一番多いのは、以下のフレーズです。
"科学的には面白いけど、得られた知見をどのように開発に役立てるの?"
「①成果・ゴール設定の有無」と関連しますが、つまりは、企業利益につながる成果イメージを踏まえたうえでの提案が必要ということです。科学的には面白そうなのに実行に移せずモヤモヤすることも割とあります。
このように、大学の場合は、研究の自由度が高い一方で、企業の場合は、利益につながるようなゴール設定を踏まえた研究に限られる印象があります。
注:ここまで書くと、「企業の研究、つまらないんじゃ?」となってしまいそうですが、もちろん全ての提案が却下されるわけではないです。また、ある程度自分のやりたいこともできます。メーカーの場合は「製品を世に生み出す」という明確なゴールがあるので、その開発に関われているという感覚も、企業の研究の良さの一つと思います。
③コスト意識
大学の場合は、とにかく研究して知見を得なければ何も始まらないので、よっぽどのことがない限り、コストの観点から研究に対して消極的になるシチュエーションはあまりないのではと思います。
一方で、企業の場合、前述の通り企業利益の意識が強いため、支出を減らすという観点でコスト意識が強い印象があります。
そのうえでは、提案した研究パッケージ、機材導入などが本当に必要なのか、といった承認フローがしつこくつきまといます。
また企業の場合、研究に投資する金額が多大であるため、その先に得られる成果・ゴールに敏感にならざるをえないという背景もあると思います。
将来を見据えて、コストを減らすことが期待できるプラットフォームに多大な投資をすることもあるくらいです。
このように、大学ではコストの観点からも比較的自由度高く研究に望めますが、企業では、研究に多大な投資をするため、なるべくコストを減らし最大成果を期待するような考え方の違いがあると思います。
④チーム・連携意識
大学では、共同研究等をしていない限りは、基本的に同じ研究室内の人との関わりに限られていると思います。
また、研究室は分野ごとに設置されていることがほとんどですので、同じ研究バックグラウンドをもつ人たちと一緒に研究を進めることになるかと思います。
一方、企業の場合は、バックグランドの異なる研究員とも頻繁に関わりを持ちます。
メーカーの場合は、製品開発系、評価系、分析系、品質管理系など様々な部署から構成され、「製品を世に出す」というゴールに向けてそれぞれのタスクが綿密なスケジュールで組まれています。
つまり、スケジュールに遅滞なくゴールを達成するためには、自分と全く異なる専門の研究員とも上手く連携してタスクを進める必要があるということです。
関わる人間の数が単純に増える、かつその人達とも上手く連携する必要があるということも、大学と企業で異なる点の一つだと思います。
番外編 ワークライフバランスの違い
ここまでは「研究」に対する内容でしたが、別の観点としてワークライフバランス、つまり、研究(仕事)とプライベートのバランスについても番外編として紹介します。
※これについてもあくまで私の場合です。一概には言えません。
拘束時間
私の場合は、拘束時間に関しては、企業の方が圧倒的に短くなりました。
毎日定時上がりはさすがに無理ですが、忙しくなければ、どんなに遅くても20時には帰宅できます。忙しいときでも22時までには確実に帰宅できていますね。
一方で、私が所属していた大学の研究室は、コアタイムが9時から21時までに設定されており、大体毎日23時くらいまで拘束されていました。
企業感覚でいうと毎日5時間は残業している計算です。今思うと信じられない。。。
休日
休日に関しても同様で、企業であればほぼ確実に土日祝休みです。
「ほぼ」というのは、週末にかけて学会があるときや、実験上どうしても土日に食い込むことがたまにあるくらいで、ほぼ完全に週休2日です。
私が所属していた大学の研究室では、土日も平気で通ってましたし、人もたくさんいました。もちろんそれでも苦ではない人もいるんでしょうけど、私は休みを潰される感覚がとてもしんどかったです。。
以上、私の思う大学と企業の研究の違い(+ワークライフバランス)の紹介でした。
タイトルの「どちらが自分に合っている?」に関しては、私は企業の研究の方が性に合ってると感じています。
理由としては、以下の通りです。
・研究の自由度は減るものの、製品開発という明確かつ意義のあるゴールがあり、それに関われている感覚がある。
・自分のやりたい研究もある程度は実行できている。
・拘束時間と金銭面で余裕があり、QOLが圧倒的に改善された。
私は研究の自由度という観点がマストではなかったので、企業の研究職でも大きなストレスなくこなせています。
逆に言えば、研究の自由度、つまり自分でやりたいと思ったことを突き詰めて研究したいというタイプの人は、もしかしたら企業の研究にギャップを感じてしまうかもしれないですね。
注:基礎研究的な部署の場合は、大学と似たようなスタンスで研究できる場合もあるとは思います
研究者として生きていくうえでは、自分の性格や優先事項を踏まえて、どんな環境(企業 or アカデミア)で働くのが最適か考えることが重要だと思います。
それでは!